新刊『大人になること』の帯に推薦コメントは入れていない。
編集者Sさんに「誰に頼むか考えておいてください」と言われ、私のほうでも、二名、このひとにと思う名を挙げたのだが、スタッフも交え、話し合った結果、推薦コメントは無しで、ということになった。
著名人の名が入ると華やぐことは確か。だけど、その人選やコメント内容によって印象が方向づけられることも事実で、今回の本はそういうのとはちょっと違うかな、と思った。そして表紙にロンがいれば強さは十分、とも思った。
その代わり、プレスリリースには「制作スタッフと関係者の声」として、編集、校正、装丁の担当者、加えて原稿連載時のウェブマガジン編集者のコメントが掲載されている。彼らは出版前の原稿を読み込んでくれたひとたち。上梓まで伴走してくれたひとたち。普段は表に出ない書籍づくりの裏方のひとたち。だけど、一冊の本を世に送り出すためには絶対に必要なひとたち。本日は、書店で目にする帯コメントとはひと味違う彼らの言葉を以下に転載したい。
こんな東京生活に、こんな女性の生き方に憧れます。でも本書に描かれているのはそれだけではありませんでした。長い年月をかけて心を通わせあった愛、輝くように純粋な無償の愛、さまざまな愛に気づき、育てる喜びが、ページを繰るほどに優しく伝わってきました。
谷内麻恵/校正者
文章がとても心地よくて、一気読みをしてしまいました。「常識」と言われるものに安易に寄りかかることはなく、私がしたいこと、私が目指すことはこれでいいのか? 何度も何度も自問して考えていく道筋が、私にはとても参考になりました。この同調圧力が強い社会において、こういう人がいてくれるのがうれしい。みんな、自分が好きなように生きられたらいい。贅沢だって、ちゃんとすればいい。こうではなければいけないという 50 代も 60 代も 70 代も 80 代もないと思う。年をとっていくことは未知なことで、正直怖いけど、怖いと思ったら、またこの本を開こうと思う。
足立恵美/編集者
長谷部千彩さんの眼はまあるくて大きい。その大きな眼がたくさんのものを見つめる。街や自分のいるところ、本、音楽、映画、花や植物、そしてちいさな動物と家族や友人などの人びとを。目に見えるものは長谷部さんの内部で目に見えないものに変わって、長谷部さんという人の一部となってゆく。物語の可能性のほとんどは目に見えないものに宿っていると感じながら読んだ。
八巻美恵/ web 版「水牛」運営人
大人になることのこと
この世の女性はみな生まれつき大人なのだとおもいます。それとぼくは男性の大人に出会ったことがまだありません。存在していないのだからとうぜん!かもしれません。だからぼくがこの先、自分にお似合いの香水と出会う日なんて訪れるはずもないのに、それでもずっとそのことをウィッシュリストに入れていると知られたら、ほんとうにかっこわるいですよね。これまで何冊かの本づくりでごいっしょする度にお目にかかった千彩さんは、お会いするごと少女性を帯びていらした。大人になること、大人が。読み終えるときに思い出しました、つまりそういうことなのだと。
好きに生きる、勇気の書に寄せて。
佐々木暁/装丁家
母を看取ったあと、私はようやく、自分がどれほど親に愛されていたかを知った。愛されてきたことを実感した今、愛という言葉は以前よりずっと身近なものになり、人を愛するとはどういうことなのかも少しわかった気がしている。
著者の近くで仕事をしている立場として、この本を薦めるのは少し照れくさい。それでも、しばらく会えていない大好きな友人たちに読んでほしいと思う。この本に書かれているのは特別な誰かの話ではなく、誰もが一度は向き合うことになる「愛」の話だから。
山崎弘崇/ web マガジン「memorandom」編集
今年の一月に原稿を受けとり、最初の読者としてゲラを読み進めるこの半年は、とても幸せな時間でした。生きていくうちには楽しいことも悲しいことも、いろいろなことが起きる。でも、それが人生なんだなあって、あらためて感じさせてくれました。読者としても、担当編集者としても、かけがえのない一冊になりました。
斉藤典貴/編集者
谷内さん、足立さん、八巻さん、佐々木さん、山崎君、斉藤さん、素敵なテキストをありがとうございました。本当に嬉しかったです。
長谷部千彩

