ジムに行くと、担当トレーナーAさんが私の顔を見るやいなや、こう言った。
「予約しましたよ、Amazonで!」
そう、先週から、ネット書店等で『大人になること』の予約注文受付が始まっているのだ。
座りっぱなしの八か月、「肩がバリバリです~」「鼠径部が痛いです~」「腰に違和感があります~」「疲れてふらふらします~」と毎度ヨレヨレの状態で現れる私に苦笑いしつつ、メンテナンスを施してくれたAさん。ストレッチしながら、「いま何割ぐらいまで来たんですか?」「まだ三割です」「やっと五割です」「八割ってとこかなあ」と交わした言葉も既に懐かしい思い出だ。
Amazonの商品ページには、収録作品のうちの一編が掲載され、試し読みができるようになっているのだが、その日、Aさんはそれを読んだ感想も聞かせてくれた。家に届くのが待ち遠しいとも言っていたが、リップサーヴィスばかりではないだろう。
いままで何冊か本を出してきたけれど、今回ほど周囲の温かさを感じながら机に向かったことはない。「楽しみにしているよ」――その言葉にどれだけ励まされたことか。売れるとか売れないとか評価とか、そういうことは私にはどうにもならないけれど、たとえ身近なひとだけであっても、世に出てくるのをこれほど心待ちにしてもらえたのなら私は大満足だ。
ちなみに私が仲間と運営しているウェブマガジン《memorandom》のオンラインショプ《little shop of memorandom》でも、今回の本、『大人になること』を取り扱う。こちらで購入された方には、私がサインを入れることになっている(購入者のお名前も)。Amazonのように送料無料サービスがないので、せめてもの気持ち。かっこいいサインとか持っていないので、楷書の署名になるけれど、心を込めて筆を走らせるつもりです。
長年、私は自分の本にサインするのを頑なに辞してきた。(佐々木)暁さんの品のある装丁を、下手クソな字で汚すのが耐えられなかったからだ。完成されたデザインに私の手書きの字なんて入ったら台無しじゃないの!という気持ちが拭えなかったのだ。
でも、近頃は、下手クソな字でも喜んでいただけるなら書きます、書かせていただきます、と思うようになった。思えるようになった、のかもしれない。
こんなところでも大人になったんですよ、私。
▶サイン本ご希望の方はこちら the little shop of memorandom
長谷部千彩

